- 過食は我慢が足りないのではない
- 過食症、食物依存症はドーパミン依存症
- 食べ物に依存する過食のメカニズム
- 過食症や食物依存症の症状
- 依存症の定義
- 過食症と食物依存症の違い
- 過食症・食物依存症の治療法
- 私が食物依存症を自力で治した方法
- 減量は一時、食事管理は一生のこと
過食は我慢が足りないのではない
過食症の治療は精神科で行われますが、過食症の治療を「心の問題」としてだけとらえるのは危険です。
精神力や忍耐力が足りないから食べるのを我慢できないわけでもありませんし、だらしないからたくさん食べたくなるわけでもありません。
過食の原因の大きな要素は以下の二つです。
- カロリー不足による、血糖値の乱高下
- 糖質摂取時に出るドーパミンの中毒
過食症、食物依存症はドーパミン依存症
「ドーパミン」は別名脳内麻薬、快楽物質とも呼ばれています。その名の通り快楽を得た時に分泌される物質です。逆に言えば、この物質が出たら快楽を感じるとも言えます。好きなことをしているとき、目標を達成した時、人から褒められた時、感謝されたとき、恋愛している時、とても興奮している時などに出る物質です。
そして、この脳内麻薬ドーパミンは「美味しいものを食べている時」にも出るのです。人間が体を維持するのに必要な3大栄養素は、糖質、脂質、たんぱく質で、これらが一つでも足りないと、人間の体を維持することはできません。ですから人間の体は、これらが体内に入るとうれしい、つまり美味しいと感じるようにできているのです。
人間が美味しいと感じる、糖質、脂質、タンパク質のうち、糖質をとった時が一番ドーパミンが分泌されやすいと言われています。次にドーパミンを出しやすい栄養素は脂質です。そして、そのドーパミンが分泌されないと、不快で耐えられなくなるのが「中毒」「依存症」などの症状なのです。
アルコール依存症、ギャンブル依存症、薬物依存症、恋愛依存症、SEX依存症、買い物依存症、ゲーム依存症などなど、各種の依存症もこのドーパミンが関係しています。
過食症や食物依存症も、美味しいものを食べることで出るドーパミンに依存している状態なのです。ですから、過食症や食物依存症は麻薬中毒のように治りにくいと言われています。
アルコール依存や麻薬依存はそのドーパミンの素となる物質を断つことで、依存から立ち直ることができますが、食事依存症は一切の食べ物を断つというわけにはいかないので、治療が難しいと言われています。過食症、食物依存症には「完治はない」とも言われています。
食べ物に依存する過食のメカニズム
自分の思い通りにいかないこと、自分にとって嫌なことが起きたり、睡眠不足、不規則な生活パターンなどで、心身にストレスがかかり、それが続くことでストレスがたまっていきます。
ストレスがたまりすぎると、それを発散するために、脳の報酬系が食べ物を猛烈に欲しがるのです。欲しがった時には、もう脳や体はドカ食いモードに入っているので、自分の好きなものを詰め込むように大量に食べてしまいます。
食べている時は、至福の幸せを感じて、糖質からくる血糖値の上昇でぐっすり眠れるのですが、翌日に、自分の行動を後悔して落ち込んでしまいます。反省して、次はこんなことにならないようにしようとしても、日常のストレスの積み重ねから解放されない限り、同じことを繰り返してしまいます。
何度も言うようですが、過食や、食物依存症は「我慢が足りない」わけではないので、反省したところで治るものではありません。脳の報酬系がドーパミンを欲しがっているから、そのように行動してしまっているだけで、性格に問題があるというわけではないのです。
誰にでも、食べすぎやドカ食いをしてしまう時はあります。ですが、それが日常的に繰り返されるようになったら、依存症に陥っていると考えたほうが良いでしょう。
過食症や食物依存症の症状
- 食べる量をコントロールできない
- 食べる時間をコントロールできない
- 詰め込むように早食いで食べ物を食べる
- 体や精神に悪影響をきたしても食べ続ける
- やめたいと思いながらも食べることをやめられない
ジャンクフード、揚げ物、麺類、パンや甘いお菓子などを、毎日のようにたくさん食べてしまう場合は、食物依存症の可能性が高いです。
依存症の定義
依存症の定義は明確で、生活や健康に問題や支障が出ているのに、自分の意思ではやめることができない状態のことを指します。上記の通り、ゲームでさえ、長時間ゲームに拘束され大金を使い、それを自分の意思でやめられなくなったら、ゲーム依存症という名前がついてしまうのです。
過食症と食物依存症の違い
食べるのをやめたいと思っているのに、どんなに努力をしても食べることをやめられないのが「食物依存症」です。
食物依存症は、ここ10年くらいでメジャーになってきた依存症で、過食症と混同されがちですが、実際には違う病気とされています。
過食症が強い痩せ願望などの精神的(考え方の)部分が原因とされているのに対して、食物依存症は「食べる」という行為そのものに依存するとことが原因とされています。
依存の対象というのは大きく3つに分けられます。物質、人間関係、行動です。例えばアルコールや薬物など摂取するものに依存する場合は「物質的」な依存と言えます。ギャンブル、ゲーム依存などは、「行動」に対する依存と言えます。恋愛依存症などは「人間関係」に対する依存と言えます。
これらの依存対象は、それぞれ独立しているわけではなく、重なりあって存在しています。
過食症や食物依存症の場合、食べ物という「物質」と、食べるという「行動」の二つの要素に依存しています。
過食症・食物依存症の治療法
- カウンセリングを受ける
- 依存先を分散する
- ドーパミンが出ない状態に慣れる
カウンセリングを受ける
過食症の場合は、原因が「やせ願望」であるため、本当にあなたは太っているのかといったセルフイメージの改善など、カウンセリングが有効とされています。
肥満外来などではカウンセリングだけでなく、サノレックスなどの食欲抑制剤を使ったり、防風通聖散などの肥満に効果があるといわれている漢方薬を処方する場合もあります。
私の精神科の担当医も防風通聖散を提案してくれたことがありましたが、防風通聖散はどちらかと言えば過食症治療薬というより、肥満症治療薬なので、やはり自分で食生活を改めようと、処方は遠慮しました。
依存先を分散する
私の担当医が言っていたのは、食べることだけに依存するから依存症なわけで、依存先を分散させれば依存症にまではならないということでした。
例えば、食べることだけでなく、恋愛、ゲーム、スマホ、手芸、料理、スポーツなどの全ての趣味を同時に楽しむ多趣味な人は、これら全ての趣味から少しずつドーパミンを得ているので、一つのものにどっぷりつかるということがありません。このような状態になれば、もはや何かに依存しているという状態ではなくなります。ですから、担当医には趣味を増やせと言われました。
ドーパミンが出ない状態に慣れる
ドーパミンが過剰に分泌されると統合失調症や過食症、その他の様々な依存症を発症します。かくいう私も、統合失調感情障害で食物依存症です。ですが、ドーパミンを全く出さないというのは不可能ですし、分泌が不足すると、物事への関心が薄れたり、運動機能、学習機能、性機能が低下したりする場合があります。
過食症や食物依存症でいうと、ドーパミンがどっぱんどっぱん過剰に出る状態を作らないことが大切なようです。要は脳が喜ぶ砂糖や油、塩分を一気にとらないことが大切なのです。
また、幼少期に虐待を受けた子供は脳の機能不全や委縮が起こるらしく、それが原因で過食症になっている場合は、大人になっても薬物治療が必要なようです。私自身も、子供の頃にひどい虐待を受けて育ったので、脳の伝達物質の出かたに異常があるのだと思います。ですから、統合失調症の薬を使ってドーパミンが出る量を安定させる治療をしています。
私が食物依存症を自力で治した方法
私自身は、過食症や食物依存症の勉強をしたことで、30キロ近くの減量に成功しました。過食衝動も生理前やうつ期には出ますが、以前ほど頻繁ではなくなりました。
私自身が行った過食症対策は、1日1200カロリーのカロリー制限、体重1kg当たりのたんぱく質摂取量を1g以上にする、野菜を1日に350g以上食べるというものでした。
最初の2週間はつらくてつらくてたまりませんでした。ですから、甘味を欲しがる脳のために、0キロカロリーのコーラを飲んだり、ブラックコーヒーやプレーンヨーグルトに0キロカロリーの人工甘味料を入れてしのいでいました。そうこうしていると、少ない食事量と食事の味気なさに体と脳が慣れていきました。
また、たんぱく質をしっかり摂ると、糖質をそんなに摂らなくても、そんなにつらくならないと聞き、プロテインバーやプロテインドリンクを食事に取り入れることにしました。プロテインバーは甘いのでスイーツ替わりになり、甘味を欲しがる脳をごまかすとができます。しかも、たんぱく質がしっかり入っているので、糖質依存も軽くなり、ずいぶん楽になりました。
また、1ヶ月に1~2回は、脂質や糖質を好きなだけ摂っていい解禁日を作り、おいしいものが食べられないストレスを逃がしていました。
最初は美味しくないのに無理に我慢して食べていたダイエット食も、慣れてくるとそれが普通になり、特に美味しくないというストレスもなくなりました。味気ない食事に慣れるには3ヶ月くらいかかりました。
減量は一時、食事管理は一生のこと
私が自力で食物依存症を軽減させた方法は、「ドーパミンが出ない状態に慣れる。」という方法でした。糖質や脂質などのおいしいものを制限することで、ドーパミンが出すぎない状態を作りだし、それを継続しました。最初はかなりの禁断症状が出ましたが、人工甘味料やプロテインバー、プロテインドリンクなどを取り入れたことで、ドーパミンが出ない状態に慣れることができました。
そのおかげで、現在は30キロ近くもの減量に成功できています。とは言え、依存症はなかなか治るものではないので、またいつ再発するか分かりません。未だに食べたくて食べたくて仕方ない禁断症状が出ることはありますし、実際に過食してしまうこともあります。そんな時は1日だけと決めて、チートデイを作り、多めに食事をとってストレスを逃がしたり、過食してしまっても次の日に極端に食事を減らすということはしないようにしています。チートデイや過食で極端に摂取カロリーが増えてしまった日の翌日からは、また低糖質、低脂質の食生活に戻し、ドーパミンが出すぎない状態に戻すよう努めています。
減量は一時のことですが、食生活の改善は一生のことです。過食症を治すには、低糖質、低脂質の食事、つまり「おいしくない食事」に慣れるしかありません。ドーパミンがどっぱんどっぱん出ている生活から、ドーパーミンが出すぎない状態に慣れるには、かなりの禁断症状に耐えなければいけません。ですが、峠を越えれば必ず慣れるので、頑張って堪えてください。
(2023/07/02加筆)
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